人事からみた採用とキャリアアップの実情

長年の採用・教育経験から新卒就活、転職、シニア転職、キャリアアップを企業側からの目線で情報発信していきます 

「子持ち様」と「独身様」の評価

見る人の立ち位置により評価は分かれる

私の新卒で入社した会社は、昭和末には『出産休暇・出産勤務・介護休職・介護勤務』の制度ができていました

ただ、実際に配属されると先輩社員に「男が育児休暇?とれるわけないだろ!」という状態で、徹底され始めたのは平成10年くらいです

十数年、同調圧力に押されながらの運営だったと思います

この平成10年辺りは今は子供の数より犬猫のペットの方が多いと言われ始めた頃で「子供は今後減り続ける」が問題になってきた時代です

若手の管理職だった頃は「子供を迎えに行くから帰る」という女性に対して「やることをすべて終えてからにしてください」と言い切ってました

そうしないとこちらが上長に叱られます

「主任は子供いないからわからないのよ」などと影で言われます

「子供3人いる課長だってわかってないよ」と言い返したくなります

それでも同期が総務部や労働組合に「子供がいる社員への配慮が足りない」と注意を受けているのを知ると「時代はそちらにシフトしているのか?」とはわかり始めます

「自分は自分の領域の仕事をこなさなきゃならない」と考えていました

「育児をしている人の苦労は子供のいない人にはわかりづらい」です

「介護をしている人の苦労は介護する家族のいない人にはわからない」です

若手の管理職の自分には「やるべきことやってから帰ってよ!」という気持ちが強いし、シングルの社員からすれば「また残業?子持ち様はずるい」という声が出てきます

立ち位置が違うと声も違います

当時は育児や介護をする人に対するマネジメントのノウハウはまだ未熟だった時代です

組織人か生物としてかで目的は変わる 

社会人になれば、フリーランス以外は大なり小なり組織やチームに属します

チームで行動すれば、ピッチャーはピッチャー、外野手は外野手の役割を果たさなければなりません

組織はそれで動いています

人間も自然界の中の一部なので、生物としてはどうなのでしょうか?

自然界の生物は共通して

生きる為に食して生命を維持する

生殖活動をして種を増やし継続させていく

食欲も性欲も快楽によって誘発されます

人口爆発も怖いですが、人口減少も人間という種族を衰退させます

いくら高度な文明を発展させようが、最新技術を進歩させようが、豪華な高層ビルを何棟も建てようが、結局のところ人口再生産性の持続可能性が担保されていなければ元も子もないので食の確保と安定種の増加と継続は最も大事なことです

せっせと働いても、そこに人がいなければどうしようもないし、人がいなければやがて「働き」それ自体も失われていってしまう

おカネをいくら刷っても、それを受けとって動ける人がそこにいなければ、それはただの紙切れでしかない

国も共同体も人あってのものだなのです

組織人としての立場と生物としての立場は昇華させなければなりません

「子持ち様」と「独身様」の評価は逆転する 

文筆家の御田寺圭さんは「子持ち様批判に共感が集まる時代はもうすぐ終わる急激な少子化とそれに伴う人手不足により、子どもを産み育てている人の社会貢献の度合いが高く評価されるようになるからだ」と述べています

最近SNSで目にする「子持ち様」は「子どもの世話にかこつけて、周囲に迷惑をかける人」を揶揄するネットスラングで、公私とわず普段のあらゆる場面で「子持ち」から被った迷惑や害について語るさい頻繁に用いられるようになり、とくにSNSの独身女性の間で定着するようになったワードになってます

しかしながらこのような不公平な状況は、現代社会が「女性の社会進出(性役割分業の否定)」をコンセンサスとして選んだ以上必至だったと言わざるを得ない」と御田寺は言います

近年は女性の結婚年齢・未婚率がともに上昇していることもあって「子持ち様の横暴に私たち独身女性が苦しめられている」という論調がきわめて優勢で、独身者が被害者であり、子持ち様は加害者であるという二項対立的なナラティブが共感を呼び、ますます「子持ち様」に対するネット上の風当たりは強くなっている

御田寺さんは「はっきり述べておくが『子持ち様』が私たちにまた自分勝手な迷惑をかけて・・・といった申し立てによって共感が集められていた時代は、もうすぐ終わりを迎える」と主張しています

2020年代から出生数は急激にその減少ペースが速まり、2023年は過去最少となる76万人足らずとなり、猛烈な速度で少子化が進行する時代においては、子どものプレミアは相対的にますます上昇することになります

なおかつ、子どもを産み育てている人の社会貢献の度合い道徳的優位性もそれにともなって大幅に改善していくことは確実 だと御田寺さんは述べています

社会に「少子化」の深刻さとそのインパクトを相殺する余力がまだ残されていたから、つまり余裕の産物だったにすぎない ようです

少子化の時代には、子どもを産み育てることの重要性や社会的価値は高まっていきます

子持ち様もいまのような蔑称ではなく、本当の意味で一等市民的に遇されるようになっていくのは確実です

一方で、人口動態の持続可能性に貢献できない独身者は「人口再生産性に貢献できなかったのだから、あなた方はせめて労働でカバーするのが筋だろう」という扱いになとも予測しています 

つまり、これまで世間に対して申し訳なさそうにしていた(することを求められていた)のが「子持ち様」だったのなら、今後はそれが「独身様」に変わっていくということになるようです

いままでの時代は、まだギリギリ現役世代がそれなりのボリュームで担保されていたのでこんなことを考える必要はなかったが、これからの時代にはそうはいかず「社会・経済・インフラ・生活それぞれの基盤となるマンパワーをだれが供給してくれていたのか/だれがマンパワーをろくに供給せずそれらにタダ乗りしているのか」を否応なしに意識させられ、そんな殺伐とした時代に変わっていくと 御田寺さんは述べています

人口再生産性に寄与するという多大な貢献をしていたにもかかわらず「熱で子どもが休んだ」くらいでその貢献値が吹き飛ばされてマイナスに振れてしまう程度にこれまでは過小評価されていた女性が、本来の評価にふさわしい立場やリワードがもたらされるように適正化されつつあるようです

SNSやメディアで「子持ち様」に対する激しいバッシングや侮蔑によって大盛り上がりできていたのは、この社会にまだ子どもが生まれない世界がどのような光景になるのかを切実な問題として想像しなくてすむ目をそらしていられる余裕が残されていたからで、そのような余裕もそろそろ底をつきます 

だれが本当に社会の持続可能性に貢献しているのかという文脈はいま以上にはっきりと浮き彫りになり、それと並行する形で、政治的にも社会的にも文化的にも人間関係的にも「子どもを持たない者」に対する風当たりは強くなっていくと御田寺さんは述べています

「子持ち様」は、いずれ本当の意味で社会から有り難がられる子持ち様として遇されるようになり、翻っておひとり様こそが今度はSNSやメディアで「おひとり様」と呼ばれるようになり、問答無用で進行する少子化と高齢化、インフレと人手不足の時代は驚くほどあっさりと時代の流れを反転させる というのが御田寺さんの予測です

本当の少子高齢化社会になった時、もっとも尊重され優遇されるのが「子持ち様」なのは間違いなさそうです

 

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