人事からみた採用とキャリアアップの実情

長年の採用・教育経験から新卒就活、転職、シニア転職、キャリアアップを企業側からの目線で情報発信していきます 

日本にもある世代間の分断

人手不足と雇用延長

どこの企業でも雇用延長はしなければならないということは理解していると思います

「採用が苦しいし、人手不足だから延長してくれるのはありがたい」

という組織もあれば、新卒採用の力があり

「延長するなら新卒の若い世代を活用したい」

と考えてる会社もあれば

「採用業務と教育業務に力を入れる余力はないから足りなくなったら中途採用で補う」

という考え方もあります

若者は採用業務も大変ですが、採用したら教育もしなければなりませんから結構な労力がいります

若手の採用と教育を面倒と感じると、いずれ社員の高齢化がおとずれます

「気がついたら社員が全員50歳以上」などもあります

これからの日本は労働力不足は長らく続き、女性も高齢者もとにかく労働市場に引っ張り込みたいという状況になっていきます

客はいるのに人手不足で倒産する企業は増えています

「AIに仕事を奪われる!」と声高に叫ぶ人がいますが、AIに仕事が奪われる速度よりはるかに早く労働人口は減り続けています

昭和入社と氷河期入社の価値観はぶつかる 

「定年延長などすべきではない!」「定年後の他社への再就職を斡旋すべきだ!」と主張する社員は就職氷河期世代が多いです

私はバブルははじけていましたが、氷河期というほどではなかった狭間の世代です

氷河期世代は高い倍率で入社してきているので非常に優秀です

そして昭和入社に対して嫌悪感をもっており、価値観も合いません

個人的には「役職定年は55歳・定年後はパートで本人が望む年齢まで雇用すべき」と考えです

「人手は足りないのでベテラン社員を安く使えるのはありがたい」

「管理職などのリーダーは新卒者がある程度の年齢になったらリーダーを任せてやりたい」

と考えています

以前マツダで定年再雇用の社員が「自分は社員と同じ仕事をして、さらにベテランなのに60歳過ぎたら給料を半分にされた」と訴えたことがありました

昭和入社の社員からすると「そうだ!長年勤めている社員に対してひどい」という声が上がっています

私の下にいる氷河期3人組は「雇う方だって新卒の方がいいのに嫌々雇っているんだから、こんな考えの連中を定年再雇用なんてすべきじゃない!」と主張されます

「昔は終身雇用&年功序列が摺り込まれ、学校出たら最後まで会社に忠誠を誓って勤め上げるんだよと言われていたんだからしょうがないだろ!」と言いますが「どこまでぶら下がる気なんですか!」と言われます

一所懸命は武士の美しい生き方だと思いますが、就職氷河期世代からは時代変化にお構いなくぶら下がる気満々の図々しい奴らと映るようです

収入を得る雇われる一択の世代と「リスキリングして別の世界にチャレンジ」「副業を早くからやっておくべき」「少しづつ投資をしておくべき」という『収入を得る水源をいくつも持ち変化に対応する世代では価値観が違います

「学校を出て未熟な自分を育ててくれて、同じ仲間と長きにわたり苦楽を共にして、最後までこの会社で終わりたい」という考えは昭和特有の浪花節的な美しさを感じます

育った時代背景からくる価値観の相違は、間を取り持つ方からすると深刻に見える時があります

割を食った世代が氷河期世代 

就職氷河期世代側から見てみます

バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代にかけて就職難で苦しんだのが氷河期世代です

他の世代に比べると同じ正社員でも賃金の伸びが鈍く、管理職の割合も低い世代です

就職氷河期世代にとって不遇の状況は今でも続いています

ここ最近の業界各社で行われている賃上げラッシュの恩恵からも外れてしまっているという残念な統計データが日経新聞の記事で示されています

「賃上げが活発!」と騒がれていますが、若者の給料が合っているだけで、40代後半からは逆に下がっています

令和の時代には先頭がいよいよ50代に差し掛かる氷河期世代は、いくら世の情勢が売り手市場に沸いているとはいえ、年齢的には労働市場でそこまで高い需要があるわけではないのです

文筆家の御田寺圭さんは近年の賃上げラッシュの恩恵にもあずかっておらず、現代日本のツケを一身に背負わされた悲劇の世代と言っても過言ではないと述べています

氷河期世代が昇給から取り残されてきましたので、資産形成の点でも不利に働いており、半数近くが保有金融資産500万円以下となっています

まだ、インターネットも普及していませんでしたので「副業で稼ぐ」ということも出来ませんでした

まさに踏んだり蹴ったの現代日本のツケを一身に背負わされた悲劇の世代です

昭和入社に 自分たちがされてきた「搾取」の論理を「自分たちはひどい目に遭ってきた分、今度は自分たちがその論理でやり返してやる」という論理の矛先が昭和入社世代に向かってるような気がします

氷河期世代も2040年代には立派な高齢者層になるが、そのとき人口ボリュームの彼らは現在と同じクオリティの社会保障社会福祉の享受はまず受けられません

 氷河期世代は結婚せず家庭を持っていない人も多く「自分の子どもや孫、あるいはその子孫たちの代まで、この国や社会が安寧に続きますように」という価値観に共感しづらい部分があります

そんな世代から見れば「高度成長期~バブル景気の波に乗ってノビノビ生きてきた世代は考え方が甘っちょろく、会社に依存心が強すぎる」と見てしまうのも納得できます

 

本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました