人事からみた採用とキャリアアップの実情

長年の採用・教育経験から新卒就活、転職、シニア転職、キャリアアップを企業側からの目線で情報発信していきます 

成功論は加工されている

やっぱりほしい成功情報

教育企画部という部署で定期採用の若手の教育・研修担当をしていた頃の話です

新入社員入社研修はゼロの人間に対して行うので組んだカリキュラム通りに行えばいいのですが、1年・2年と経過すると個人差も出て来て「どんな研修内容にすべきか」難しくなってきます

現場は競争社会なので個人差は付くのは当たり前の世界ですが、教育・研修は付いた個人差をできるだけ高い基準に合わせて均一化するのが目的です

教育企画部には2軍は徹底的に型教育・個性は1軍で発揮と書かれています

営業などでは1年で個人差が結構出ます

若手社員の研修レポートを見ると

「○○さんの成功例が参考になった」

「売上がいい人はどんなことをしてるか知りたい」

などが目につきます

自分自身も営業の時は営業の成功例の方の書籍

企画の時には企画で成功した方の書籍をよく読んでいました

人は他の人の成功した話を求めています

それ以降、2年目以降の社員の研修は成功例事例に比重を置き作られるようになりました

 

成功ストーリーの落とし穴 

あの人はどうやってこの素晴らしい実績をつくったんだろう?」

は皆、知りたい情報なので熱心に聞いています

研修課のスタッフからも「成功例に時間を割きましょう!もっと企画してください」と要望されます

私の仕事は研修内容の立案と組み立ての仕事でした

業績の良かった社員へ連絡して、理由を聞いて講義内容をまとめます

続けているとおかしなことに気づきます

「あれは本当に運が良かったんです」

「僕は配属先に恵まれました」

「偶然よい顧客に恵まれて」

と8割方が運が良くて成功したと言ってきます

若手は正直ですので本当にそうなのだと思います

私は営業の担当でしたが、後輩の女性は商品開発の担当でした

横で電話のやり取りを聞いていると

「運がよかったじゃ困るのよ」

「偶然思いついたじゃなくて他の言い方ないの?」

などと聞こえてきます

成功例のデスカッションが運が良かったでは教育・研修担当としては困るのです

「あえて、あえてでいいからこれやったとかない?」

という小さなものを拾い、立派なサクセスストーリーに作り上げていきます

思うに世の中にあふれている成功ストーリーは加工されたものが多いのではないかと思います

 

後知恵バイアス 

後輩の女性が担当したヒット商品の成功例を聞いていたMD推進室の課長に「これちょっと盛りすぎだよ!」と苦笑されます

アイディアなんてランダムに思いついたものの中から偶然発生したものだよと言われます

講義する方も「なあんだ、たまたまか・・・」と思われたくないので「いかに努力したか」などが盛り込まれます

多くの人間の前で話さなければならず、それっぽいことを答えざるを得ないのです

結局、教育企画課がプロデュースした報道番組のようになってしまいます

世の中にこれだけの成功ストーリーがありながら、成功できない人も溢れているのはなぜでしょうか?

それは成功例は美しく加工されているからだと思います

実際は運の良さがかなりのウエイトを占めているのに、そこは削除されています

これは後知恵バイアスがかかっていると言えます

後知恵バイアスとは、物事が起きたあとで「そうだと思った」などと、まるでそのことが予測可能だったと考える心理的傾向のことです

プロセスや戦略そのもの以上に、結果によって印象が左右されているのが後知恵バイアスがかかっている状態で、実際の結果以外に起こりえたかもしれない別の事象を考えることでバイアスを軽減させられると言われています

後知恵バイアスは真実を欠いてしまう恐れがあります

成功例の中には素晴らしい努力や、基本基礎を継続し続けてのものもあります

成功例を鵜呑みにしないで、見極めることが大切だと思います

 

本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました