人事からみた採用とキャリアアップの実情

長年の採用・教育経験から新卒就活、転職、シニア転職、キャリアアップを企業側からの目線で情報発信していきます 

子育ての知恵を新入社員育成に活かす

新入社員は社会に出たてのヨチヨチ歩き 

新入社員の時、もらった領収書に「社名欄に(株)がない」で経理から突っぱねられました

「新入社員研修でやっただろ!」と言われても社会に出たてのヨチヨチ歩きの頃はヒューマンエラーはつきものです

当時は若者も多く、大量に入社してくる新入社員に対しては「早く使えるようにすること」「競争の原理で業績を伸ばすこと」がメインだった気がします

現在のように「若者は貴重」という意識は全くありませんし、ハラスメントという言葉もありませんでした

教育強育でしたが、社長が変わり「人づくり=教育が最も大切」と言われ始めると教育共育同じ目の高さで考えよとなっていきます

人には変化を求めるくせに自分は変化する気のない管理職はいらないとハッキリ宣言していました

そう聞くと「人間味のある良い社長」と聞こえますが、厳しさのポイントが違うだけです

「昔は業績の悪い若者がいれば本人の努力・能力のせいだったが今では『教え方・管理の仕方が悪い』と見られる」とマネジメント職はぼやきます

UCLA医科大学精神科教授ダニエル・J・シーゲルと心理セラピスト、ティナ・ペイン・ブライソンの『生き抜く力をはぐくむ愛着の子育て』は新入社員育成のヒントとなります

 

大人の愛着が最も重要

新入社員時代の同期入社にKという学生時代から仲の良かった社員がいます

上長であるO支店長は九州から来た大雑把な性格の方で、風邪をひいて休んだ日に支店長がアパートを訪ねて来て「晩飯作ってやるけん」と「この世のものとは思えないまずい飯を食わされ、台所を汚しっぱなしで帰っていった」と迷惑がります

営業成績が悪く、毎日遅くまで足を棒にして夜遅く支店に帰ってくると「今から飲みに行くけん付きあえ!」と疲れているのに朝の4時まで引きずりまわされ「俺は明日は休むけん」と本人は休み、Kは寝ずに出社だとぼやいていました

営業のスキルについて聞くと「なんやおまえは理屈っぽい!さっぱりわからんわ!」と言われ呆れていました

その割に「あの人でなければ辞めていたかもしれない」とこの支店長をいつまでも慕っています

「いつも最後に小声でボソッと辞めるなよって言うんだよね・・・取引先や顧客が『K君頑張ってますね』とか褒めるとそうやろそうやろと嬉しそうに笑うんだよね」

この支店長は何の知識を教えてくれたわけでなく、何のスキルを伸ばしてくれたわけでなく、Kはたったこの2つのアクションのみで支店長を慕っていました

愛着の強さだけで人を育成した人と言えます

このO支店長はのちに営業部長になり私も何度か関わりましたが、本部に転勤してからその時の報告書を見ると「支店長はこんなによくやってくれたが私のサポートはダメだった」という私を褒め自分を落とす内容で書いてありました

大雑把な人だけど、この人と付き合ってる人は皆、素晴らしい成績を残しています

 今、世界の教育界で最も注目されている愛着で子どもの自己肯定感を育むには親からの揺るぎない愛着が必要だとダニエル・J・シーゲルとティナ・ペイン・ブライソンは主張しています

親と確かな愛着で結ばれている子どもは、学校で、人間関係で、そして人生で成功する可能性がはるかに高くなるようで「子どものなかに確かな愛着を育むにはどうすればいいのか?」に対してただ寄り添えばいいと述べています

愛着の強さは、スキルや能力よりも大切な土台のようです

科学研究でわかったことは、子どもがどう育つかを予測するうえで最もよい判断材料となるのは少なくとも1人の大人(必ずしも親でなくてもいい)が感情面で支えになり、そばにいたかどうかだだと言います

子どもにすくすくと健全に育ってほしいなら『ただ安全で・見守られ・なだめられ・安心できると、感じさせてあげればいい』

大人が寄り添っていると、子どもは生活全般で自分が安全だという安心感をいだき、世界を自分の居場所と感じながら生きているので、たとえ思いどおりにいかないことがあっても自分は大丈夫だと思えるそうです

子どもが障害や挫折にぶつかったとき、確かな愛着が緩衝材のような働きをするのです

挫折や失敗を経験をした時、確かな愛着はスケートボードをするときのヘルメットと同じ気持ちの防具のように働くと述べています

難題にぶつかってもうまく立ち直るためのヘルメットがあるから、しっかりした自我を失うことなくつらい胸の痛みを乗り越えられるのです

 

子供は本来強がるもの 

個人差こそあれ、子供はある程度の年齢になると子ども扱いされることに反発してきます

学生時代は指定されたカリキュラムをクリアし、最終学歴を卒業しても社会に出るとまた自分は弱者だと実感させられます

何もできないくせに「先輩社員の売上のお陰で給料をもらえる」などと言われると心の中では強く反抗します

「自分は未熟だと思われたくない」

「人のお陰で生きていると思われたくない」

「俺だってやればできるんだ」

反抗期のような感情が再び芽生え始めています

黙って聞いているようで先輩社員の説教』『自慢話は反発心を覚えています

新入社員の育成はサイレント反抗期の子供の育成みたいなもので、子供同様『愛着の強さ』が大事になってきます

「一人前の大人扱い」もしなければならないが「未熟な子供の見守り」もしなければならないところに若者の育成の難しさがあります

 

本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました